最後のディズニープリンセス

インターネットのうわさによると、一番最後のディズニープリンセスは全てをさらさらなものにするそうです

重力と恩寵

重力と恩寵―シモーヌ・ヴェイユ『カイエ』抄 (ちくま学芸文庫) | シモーヌ ヴェイユ, Weil,Simone, 保, 田辺 |本 | 通販 | Amazon

 

聖女

人類史上最後の聖女。マザーテレサ? 誰だそいつは? ガンジス川を飲ませていた奴だぞ。さぁ、お引き取り願おう。

 

シモーヌ・ヴェイユは文字通りの聖女だ。いや、それ以上。つまり、聖女のシニフィエを思い浮かべよう。浮かんだ? それがシモーヌ・ヴェイユ。といった具合に。つまり、”文字(シニフィアン)”どころの話ではない。

 

重力と恩寵の重力

 

「なぜ貴女はこの本を読んだのですか?」

 

よい質問。答え:ずばり、意味わかんなそうだったから。

 

待て。待ってくれ。引き金を引くのはまだ早い。撃鉄は起こしてもらって構わない。しかし話を聴いてほしいのですが。ありがとう。ありがとう......

 

書店に行って、まぁ色々と物色するだろう。けれど、実際のところは全く知らない、しかし惹きつけられるものを求めているんだ。望遠鏡をのぞくのは、未だ誰も知らない星を見つけるためだろ......

 

重力と恩寵』。

 

私は無教養だから、残念ながらあなたたちとは話が合わないだろう。だから、あなたたちにとっての"常識"(ここで私は両手で人差し指と中指をくいっ、と二回動かした)とやらは私からするとなんとも崇高なものに思えるのです。インテリゲンチャって言うんでしょう? なんだかかわいらしい名前だが。ゲンチャ......げんちゃ。ふふっ......

 

とにかく、なんにしろ、私からするとこの本は、まるでネクロノミコン。宇宙の叡智が詰まった秘密の本。あるいは死海文書。人類補完系で使徒とランデブーしようよ。私のエヴァの、コード777。

 

 

ええ.....はい。ゲホッ......ゲホッ......あぁ、あごが痛い......そういえばダーク・ナイトで脳から先にやると感覚が鈍ってだめだって言ってたな......完全に正しい......

 

それで.......ええと。ああ、そうだ。そうですね......

 

つまり、こういうことなんですよ......もし仮に、神が全てであるのなら、神は『停止』しているはずだ......

 

神が全てであるなら、神が"新たに"何かをするのは、矛盾している。まぁ、常識でしょう? はは。調子が出てきた。この話は好きなんです。全知全能と無知無能の同一性の。勇気が出るでしょう? 僕でも、なにか......

 

ヴェイユは世界創生を、神の自己否定だと言うんです。神以外のものを作り、世界から御自らを追い出しなされた......我々への愛。

 

しかるに、我々は無にならなければならない。神は、我々への愛によって、自らを否定なされた。だから我々も、神への愛によって、自らを否定しなければならない。

 

『重力』は......そんな我々をこの世界につなぎとめようとする力です。存在の耐えられない重さ......

 

金、権力、無意味な競争原理......それらは全て重力だ。箱庭の中のおままごとです。それによって我々は箱庭に意味を見出すんだ。そこで生きようとする。そこに囚われる。

 

『恩寵』......それを賜るには、恩寵への注意が必要です。空白を受け入れなければならない。金も権力も絶って、世界の外に目を向けないといけない。保存則のない世界です。あなたの費やしたエネルギーは、『消失』する。そこにこそ恩寵が入り込む余地があるんです......あたしゃ理解できんがね......なにせ、ほら、ここがね......(私はこめかみをとんとんと叩いた)

 

ああ......目が見えない......まぁけど、この景色も悪くない......

 

恩寵は、それはつまり犠牲のことというのが、まずは簡単でしょう......

 

そしてあんたの、あんたの中の『必然』に従うこと......

 

例えば、私をこうして鎖でつるしてというふうに......なんだい。あんたいやいやこんなことやってるってのかい。はは。それじゃあ、まぁ、俺も耐えるとしようかね。

 

必然を行うのはエネルギーの消失をともなう。なにせ、結果が明白だからだ。そこには行為に対する報酬が、エネルギーの変換機構が、すっかり失われている。

 

『無』となったエネルギーは、神が世界を創ったときと同じように、お前に恩寵として降り注ぐ。

 

そして一番大事なのは、『恩寵を信じないこと』。

 

ああ、腰が痛い......

 

喉が渇いた......ああ、生き返る。

 

そうか、明日か......嬉しいなぁ......腕の見せ所だ......

 

はは。なぜ泣く。お互い、これ以上ない成果を得たというのに。

 

罪......罪。

 

罪も罰も、それらは転嫁だ。それらは寧ろ、被害者の側にある。

 

無実の被害者の内でこそ、最も罪が感じられ、最も罰が感じられる。『神よ、私が何をしたというのですか......』

 

だから、それは私のものだ。私が今胸の内に秘めるもの。それが。

 

安心して。私が責任を持って引き受ける.......

 

今は愛しか感じられない......