最後のディズニープリンセス

インターネットのうわさによると、一番最後のディズニープリンセスは全てをさらさらなものにするそうです

日記

昔あなたの呼吸は夕暮れのようだった。渋谷のホームレスを思い出す。君の呼吸を見た瞬間、ホームレスが君に祈り始めた。確かこうだった。「微笑みたまえ。生きたまえ」。彼らはいつも本質的だ。

 

あなたの呼吸は夕暮れであるからして、定義から言ってそれはもはや終わりかけのものだった。世界を夜が覆った。ホームレスは人狼に食われた。どこからか祭り囃子の音が聞こえてきて、僕らは布団に包まりながら暗闇を暗闇で必死に見えないようにした。

 

願いなどなかった。両親が隣の部屋でペースト状にされているときでさえ。なぜかというと、涼しい匂いがしていたからだ。水と風と土と葉の匂いがした。悟りの匂いがした。

 

星々の光の隙間を縫うようにして君の肉体が充満していった。クリスマスから6日前の夜の出来事だった。イルミネートされたショッピング・モールで名前も顔も声も知らないバンドが何かの歌を歌っていた。誰も聴いていなかった。僕だけがそれを聴いていて、それはもう、本当に本当にすごかった。今までで行われたどのようなライブやミュージカルや舞やコンサートも、ここまでの芸術的、宇宙的域に達したことはなかっただろう。彼ら(恐らくスリーピースバンドだった)は演奏が終わると、光の粒となって空気に溶けていって、後にはギターのピックしか残らなかった。その日から私は冬が好きになった。