最後のディズニープリンセス

インターネットのうわさによると、一番最後のディズニープリンセスは全てをさらさらなものにするそうです

金の左目

ある時、ある国に金の左目を持つ王女が産まれました。

国王と従者たちは大変驚きましたが、これは喜ばしいことだと大いに騒ぎ、王女はとても可愛がられました。

王女の美しさは皆を虜にし、国の誰もが王女の美しさを讃えました。誰も彼もが、「あなたの目は美しい」と王女を褒め称えました。

別の国の王子や、高名な学者、屈強な戦士、村の農夫といった、数々の男たちが王女に結婚を申し込みました。そしてやはり誰もが、「あなたの目は美しい」と口を揃えて言いました。

ですが王女は優しい心の持ち主で、誰か一人を選んでその人と結婚するということが耐えられず、返事をしないままにしていました。

そんなある時、怪しげな眼帯をした男が王女に謁見を求めました。

従者たちは、この男も王女に結婚を申し込むのだろうと思い、王女のもとに案内しました。

男は王女に恭しく一礼すると、「あなたの左目を見せてはくださいませんか」と頼みました。

王女はそれに応え、左目がよく見えるように目を開きました。

男はそれを見ると、「実は、その左目は私のものであるはずだったのです」と言い、眼帯を外して、自分の右目を見せました。

そこには確かに、王女の金の左目とよく似た金の右目があったのです。

そして、そう言われたあとよくよく見てみると、王女の右目と、金の左目は少し形が違うことに従者たちは気付きました。

そして男の左目は、王女の右目とそっくりだったのです。二人の目は、神のいたずらか、入れ替わってしまっていたのでした。

王女は酷く驚きましたが、優しい心を持っていたので、男に金の左目を返してあげることにしました。

男は深く感謝し、「あなたの心が綺麗だから、金の左目があなたに与えられたのかもしれません」と言って、片方の目から涙を流して喜びました。

こうして、王女は金の左目を失うかわりに普通の目を得て、視力がとても良くなりました。

男は、普通の目を失うかわりに金の左目を得て、またどこかへと去っていきました。

そのことが国中に知れ渡ると、民たちは最初、王女のことを褒めそやしましたが、王女の姿を見るなり、皆王女のことを避けるようになりました。

あれだけたくさんあった結婚の話も、農夫のものを除いて、全てなくなってしまいました。

王女は、自分が今まで皆に愛されたのは金の左目のおかげだったのだということに気づき、深く悲しみ、同時に怒りました。そして、あの男を探し始めました。

やっとの思いで男をみつけた王女は、金の左目を返してほしいと頼みました。

しかし男は、それはできないと答えます。

怒りに我を忘れた王女は、その男を殺して、目を奪ってしまいました。

金の両目を持った王女は、今まで以上に人々に愛されました。

これに気を良くした王女は、もっと皆に愛されるために、金の体を持つ人を探しました。

金の左腕を持つものの腕を切断し、金の右足を持つものの足を切断し、金の乳房、金の鼻、金の耳、金の髪と、金の体を持つ人たちを追い詰めて、それを奪い、自分のものにしていきました。

いつしか王女の体は全て金になってしまい、王女は歩くことができなくなってしまったので、国で一番目立つ場所に自分を置いてもらうことにしました。

王女の金の像には毎日人だかりができて、王女はとても喜びました。

結婚の話も増えました。別の国の国王や、商人、鍛冶屋といった男たちが王女を欲しがりました。

ある時、どこかの農夫が、畑の土を鍬で掘っていたら、なんと、土の中から金が出てきました。

その話を聞いて、人々は皆土を掘り始めました。そうすると、たくさんの金が出てきました。

いつの間にか、王女の金の像の周りには誰もいなくなり、皆、金を掘ることばかりに精を出すようになりました。

その内、金の食器や、金の剣、金の王冠や、金の建物、金の像や、金の服がたくさん作られ、それらの美しさに人々は目を奪われました。

ですが、王女の金の像の周りには、やはり人は来ませんでした。なぜなら、王女の金の像は体がちぐはぐで、ぐちゃぐちゃでした。

王女は深く悲しみ、涙さえ流れてしまいそうでしたが、金の目から涙が出ることなどいつまでたってもありませんでした。