最後のディズニープリンセス

インターネットのうわさによると、一番最後のディズニープリンセスは全てをさらさらなものにするそうです

由美子

小学校から中学まで、由美子という同級生がいた。とてもいい匂いがして、別格に綺麗な奴だった。髪の毛がサラサラで、艶が天使の輪っかみたいだった。歌がうまくて、仲のいい奴らと一緒によくカラオケに行っていたらしい。由美子は清廉潔白で、俺たちがエロで盛り上がっても、本当に、なんのことか分かっていなそうだった。

 

俺は田舎に住んでいて、小学校も中学校も一つしかなく、みんな顔見知りだった。だから、中学三年生になると、高校でバラバラになってしまうことに悲しみを覚えた。知っているはずの人たちが自分の知らないところで知らないことをして知らない人間になっていくのが、とても怖かった。

 

由美子は中学三年生の時に『犠性』になった。親世代はこれを神様のお世話係だという風に俺たちに説明するのだが、中学三年生の俺たちはこれがそのようなものではないことを分かっていた。そしてあの、純真無垢そうで、勃起とかすら知らなそうな由美子も、自分がこれからどんな目にあうのか分かっていたし、多分、俺たちが想像するようなものよりももっとむごくて酷くて下劣な様を想像していたと思う。なぜなら由美子は笑っていたから。

 

 

由美子は多分こうなることをとても小さい頃から察していたのだと思う。俺たちがまだ小さかった頃、小学生くらいだった頃、美奈子ちゃんも犠性になった。美奈子ちゃんは手足がすらりとしていて、元気溌剌だった。美奈子ちゃんは17歳で犠性になった。美奈子ちゃんの彼氏さんは今は東京にいるらしい。

 

可愛くて、優しくて、人気者で、歌が上手な由美子は、頭の中では自分が咥えさせられ、舐めさせられ、舐められ、触られ、揉まれ、あるいはもっと、自分がそうなってしまうことをずっと想像していたのだろうか。

 

由美子は東京の大学に行ったが、2年生のときに中退して、自殺してしまったらしい。お腹の中には赤ん坊もいたそうだったが、由美子の周りには男の影一つなかったという。また、尾ひれのついた噂話だが、由美子の死体が見つかったとき、何故か赤ん坊は産まれていて、死んでいるにも関わらず由美子に抱き着いて剥がれなかったという。男の子だったそうだ。