最後のディズニープリンセス

インターネットのうわさによると、一番最後のディズニープリンセスは全てをさらさらなものにするそうです

全部月がきれいすぎたから

割れた花瓶が茶色い床に横たわって 

あなたはいつもそれに触れようとする 

そうして指から血を出して 「花が咲いた」と笑う 

蚊がやってきて あなたの血を吸う 「少しずつね」 

アラビアの青年の細い指先が私たちの手を固く握りしめ いつのまにか これって家族なんかな 

いつまでも知らないふりはできないよ みんな気づいていない 月はもうすぐそこまで迫ってる 誰かが止めなくちゃ 

僕は老婆を二人殺して手に入れた血まみれの斧を いつか その時がきたなら この 手で 流れ星さ 

子供ってのはみんなそう 知らないことを知りたがる 一番何でも知ってる時期なのに それを知らないんだ これは笑っていい話なんだ 本当さ

娼婦の化粧はいつだってきれいだった 不思議な素朴さがあった 彼女は私の隣で眠るときにはいつも手を握ってくれた

私のコップも 私の皿も 花瓶と一緒に多分 パリンと割れて床に散らばって あなたはやっぱりそれに触れると 血を流す 月色の涙を流してあなたはギターのピックを手に取る 

アラビアの青年は 犯され 剥がされ 燃やされ 磔になって でも最後の最後までキスは拒んだという 彼の十字架にあなたはいつも花を添えて 二日がたったらそれを燃やしてじっと見つめる

あなたはいつもみたいに花瓶に手を伸ばした あなたの指はあるべき場所を見つけると 床からひとかけらひろいあげて 「ねぇ見て」 あなたは微笑んで ナイフの代わりに花瓶を手に取る

もちろん言うまでもないことだ 斧のほうが花瓶より強い あなたは花瓶になった まっかな花が咲いた 4分の1回のキスを4回した  血の口紅で私の唇はあなた色に染まる

斧をひきずって私は外に出て 月を見上げた ねぇ もう触れられそうだよ 偶数人目の最後は それは最初から決まっていて みんな見ててよ これがぼくのあなたたちへの思いやりだから 私は横たわりながら いつもと変わらない月を見上げて なんだあ そういうことかよ そういうことはもっと早く言ってくれなくちゃ  ああ  もう 今日は疲れたから 全部  月がきれいすぎたから  とにかく それだけ それだけ それだけ